中国から来日された毛老師の講習会に、二日間あわせて4コマ参加した。
実技よりは話を聞く方が長かったが、いくつかとてつもなく重要なことが学べてよかった。
以下、当日取ったメモ。間違ってる部分もあるかもしれないがそのへんはご勘弁。
【鞭杆の由来に関する話より】
一画開天(一は陽)。
陰と陽は二つに見えるがもとは一つ。
人間が最初に使った道具は棒であり、もとは労働の道具。
棒は武器としても道具としても使いうる(いろんな武器は棒=棍の子孫)。
鞭杆は文明の道具であり、それを学ぶことは原始からの歴史を復習すること。
300年前、山西省では商人らが栄えた。
当時の商人は馬/駱駝/驢馬であちこちへ行った。
駱駝はコントロールしにくく、鞭はだめで、棒でコントロールした、これが駝騾(ラクダ)鞭杆。
その棒を持ち、護衛も兼ねた人々がいた。
棒は、歴史的に一番古く機能多く、安上がり。
刃物を持つことが禁止されることもあった(棒なら引っかからない)。
剣や刀は片手使いだが鞭杆は両手使いである。
陜西省の鞭杆は長拳や通背拳に似た武術。
山西省の鞭杆は、鞭杆拳門という流派が百年前まであり、棒を使わない鞭杆拳もあった。
鞭杆の長さはさまざま、胸まで、腰高、腕の長さ、肘まで、手のひらの長さ(指鞭)の5種類。
【老師と鞭杆の出会いの話より】
老師は幼少時病弱(1957年生まれ、早産で2000gちょっとしかなかった)。
自分で本を読み、マッサージを始めて100日くらいで目と耳がよくなった。
それで運動が健康にいいとわかり、9歳のころに武術の先生に弟子入りしたところ、それが鞭杆の先生だった。
その後、文革で、4年間田舎で労働して体を壊した。
さらに、山西大学に入学したが、練習で体を壊した。
大学院生になって、武術をどうやれば体にいいのかを研究し始めた。
一番好きな武術は太極拳と鞭杆で、鞭杆をやると目が良くなった。
【練習前の準備についての話より】
準備運動は必ず必要だが、方法はいろいろある。
体を温めるためにゆっくり套路をやっても準備運動になる。
体を温めるほかにもう一つ大事なのはストレッチで、すべての筋・関節を伸ばすこと。
いろいろな方法に取り組んだほうがいい。
意識の準備も必要で、静的な面と動的な面の両方から準備する。
自分の体を感じ、精神の静と血液の動を合わせて一にする。
【鞭杆のときの「足」に関する話より】
歩幅は人によりけりで、はっきりと決まっていない。
力のある人なら幅が広くても構わない。
原則は、その歩幅でリラックスできるかどうか(余分な力が入らないということ?)
重心はかかとでなく足の前半にのせ、次の動きに備える。
着地はかかとから(力は入れない)。
落在脚跟
力在脚掌
姿勢では「まっすぐ・足裏・丹田」が大事。
用意不用力
→立身中正(まっすぐ立つ)
→守丹田
→覚知是心力
立禅の時の重心は、「養生のため=平衡=無極」「功法のため=足の前半に入れる」。
【鞭杆をやるときに大切なこと】
とにかく大切なのは「基本」。太極拳の練習をするといい。
○拳譜
○立身中正
○纏粘随
1 形:体を中正に
2 意:用意不用力→意識を使って力をうまく使う=力が要らないわけじゃない
3 気:呼吸の気(呼吸法は自然)・内気(体の中の気、見えない触れない、命を守って存在する、リラックスすると気の流れも自然になる)
4 力:リラックスと意識と気とを合わせて使う
脆如撃鼓
【基本動作】
○猿猴攀枝(内家拳の一番基本の足、束展:「絞る」と「開く」)
両手で鞭杆を持って膝まで下げていく。
重心は足の前半分、お尻と骨盤は前に出す。背中は丸めていい。
足は開かない、両膝を付けた状態でやる。
○獅子揺頭(内家拳の基本功法)
両手で鞭杆を持って肩甲骨(前)に当てる。
上へ上げて鞭杆の中心を見る。
ゆっくり90度左へ体を回したら、また前へ戻す。
ゆっくり90度右へ体を回したら、また前へ戻す。
鞭杆を下へ下げていき、収める。
○晃水功(カンフーの練習の基本の基本)
脚を少し開いて立つ。
足の裏を意識しながら左右に重心を移しつつ、鞭杆も左右に振る。
水のように滑らかに、ただし上を意識せず、むしろ足の裏全体を常に意識する。
鞭杆を振る高さを腰、肩、頭、頭の上、真上へと高めていく(棒はだんだん斜めになる)。
逆に振り子を下げて行って収める。
この間、かかとを決して上げないこと。
脚を柔らかくし、適度な重心移動、それから肩をほぐして動かすことを心がける。
リラックスして練習したほうがいい。
手もリラックスし、体の力に合わせる。
これができたら前後を打つ練習に変えたり、「転環」にも変えられる。
○撹丹田
脚を開き、鞭杆は丹田に付ける。
重心を左右に変え、体を90度回しながら鞭杆を上下させる(船漕ぎみたいになる)。
鞭杆は中心で上がってくる。
膝の前、肩のあたりでそれぞれ力が入る(リラックスしても構わない)。
必ず「重心移動のあと」で、体の向きを回しながら鞭杆を回す。
○纏(ちゃん)
弓歩で前後しながら棒も前後に揺らす。
1・2リラックスで、3で力を入れる。
左へ重心を移したら鞭杆の先も左へ振れる。
鞭杆の先で丸く円を描く(直径30-60センチ)。
【その他】
鞭杆の威力を発揮させるためには、ツボや急所を狙う(耳、首など)。
鞭杆を体の近くに置いて全身の力を借りる。
鞭杆の弾力を利用する。
鞭杆は中国では山西省鞭杆と広東省鞭杆の二大流派がある。
鞭杆の握り方は、「実虚半松叉換滑扣」の種類がある。
鞭杆はいろんな動作に合わせられる。
鞭杆の練習のスピードは速くても遅くてもいいし、リラックスしても力を入れても構わない。
鞭杆は自分の兄弟のようなもの。
【後日談?】
「猿猴攀枝」は、「膝が弱い人がやるといい」という話だったので、毎日ちょっとだけやるようにした(結構ツライので続けるためにちょっとしかできない……)。
そうしたら朝、駅の階段を降りるときに右膝が痛まなくなった……ような気がする……。
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