とあるクラウドファンディング顛末記
何かの参考になるかもしれないので、DHLとのトラブルを含めた事の顛末を記しておく。
2018年3月頃にKickstarter(クラウドファンディングの一種、海外版)で面白そうな旅行用ジャケットを見つけた。
Baubaxという会社のジャケットだ。
うっかり好奇心に負けてファンドレイズした(商品化されるなら先にお金を払うよ、という約束をすること)。
知らない人のために仕組みについて一応書いておくと、こんな感じで進行する。
- 「こんな商品を作るから、応援(投資)して」というプロジェクトがKickstarterに掲載される。
- 「こんな商品が作られるなら欲しい!」と思ったヒトは、購入する内容(1つだけか2つ組みか、オマケ付きかなどのバリエーションがある)を選んでクレジットカードでの支払いを予約する。
- 目標額に到達しなかったら不成立で、お金は支払われない(引き落とされない)。目標額に達した場合、その時点で代金が支払われる。
- Kickstarterからファンドを募集した団体ないし個人(今回はBaubax)に、集まった資金が渡される。彼らはこの資金を元にして、約束した製品を生産する。
- 出来上がったら発送され、契約した個々人に商品が届く。
件のBaubaxは結構な人気で、2018年4月15日に目標額を大幅に上回って無事成立。
同時に決済(予約)してあったクレジットカードから該当の金額が引き落とされた。
ここから先は延々と待つことになる。
ときどき送られてくるメールで進捗をチェックするけど、まあ、待つのが苦手な人にはおススメしない。
ひたすら待つしかない。
すでに一度、Pictarという製品で納期の延期に次ぐ延期を経験済みだったので(やはりKickstarter)、今回もじっと我慢の子であったが、当初は9月か10月という予定がやっぱり大幅に遅れ、11月に入っても送られる気配がない。
さすがに「東京は寒くなっちゃったから早くほしい」とKickstarterでコメント(笑)。
まあそんなコメントを投稿しても早まったりはしないんだけどね。
でも必ず返信が付くのは、距離が近くていいところではある(たしか「11月中に発送するから待ってね」みたいな返信をもらった気がする)。
そしていよいよ、2018年12月に製品が送られてきた。
個人輸入にあたるため、関税がかかる(100ドル以内だとかからないと思うが、超過していたから)。
DHLの配送員に30ドル相当の日本円を支払って、やっとゲットである!
長かった……!!
ギミックがいっぱいなので、アイマスクだのスタイラスペンだのの付属品が全部揃っているかどうかをチェックして、問題ないことを確認したうえで、やっと着用してみた。
……小さい。
アメリカサイズだと思って注文したのに。
小さいです。
セーターを中に着られません(苦笑)。
春秋限定仕様……?
サイズ交換できるのかどうかを再びKickstarterのコメント機能で問い合わせた。
そういうコメントには、次にサポートからメールが届いて、以降、Eメールでのやりとりになる。
自分の場合もご多分にもれず、BaubaxのサポートからEメールがやってきたので返信で細かい希望を出し(どのサイズに変更したいか)、どうすればいいかを教えてもらった。
(Eメールアドレスやら住所やらは最初の契約時に向こうに情報を伝えてある)
ジャケットを箱に詰め直し、料金の安いSAL便で指定の住所へ送り返した。
そしてまた待つ。
と、お正月にEメールがやってきて、新しいジャケットを発送したという。
思っていたよりもずっと速かった。
なぜかこちらの返送した荷物が到着する前に発送されている。
なんかこのへんが不思議だが、早い分にはまあいいや(いや、よくなかったかも……しかしここで「配送品のラベル上、返品交換品になってない」ことに気づけと云われても無理でござる)。
2019年1月4日にDHLが配達にやってきた。
ところが再び関税を払えという。
「返品交換品なのに関税を払うのって、二重取りでおかしくない?」
と、疑問を呈したら、一度持って帰って調べるという。
どうしても必要なら払うから、悪いけどそのときはもう一度配送してねと配達員に頼み、荷物をいったん持ち帰ってもらった。
二週間音沙汰なし。
いくらなんでもおかしいと思い、1月19日にDHLに電話した。
電話口に出てきた女性は丁寧に、通関がそう決めた以上は関税は支払いの義務があって、DHLではどうしようもないことを説明してくれた。
でもじゃあなんで二週間もほったらかされてるの?と、つい、激怒。
支払いが必要ならさっさと再配達すればよかったじゃないか!
土曜日で担当者がいないので、月曜日にきちんと調べてご連絡します、ということでその日は終わりになった。
1月21日、月曜日にDHLから電話がかかってきた。
なんと。
「棄てた」
という。
経緯はこうだ。
持ち帰った荷物について、なぜか発送元に「関税支払え」とDHLがオファー。
発送元は当然拒否し、「じゃあ荷物どうする」「棄てて」「わかった」というやりとりをしたらしい。
で、なんで私に連絡が来ないんだ??
怒り心頭。
DHLいわく、発送元が契約主だから、契約主の意向がすべてに優先して尊重されるので、うちに落ち度はなく補償はない、と(かなり丁寧な言葉で云ってたけど、結局そういう内容だった)。
そりゃ社内規程ではそうかもしれないけど、「持ち主の許可なく私物を捨てた」ことに変わりはないんだが。
怒りが収まらず、しかしてDHLに交渉してもジャケットは手に入らないことになったので、もう一度Baubaxに交渉するしかない。
それにあたっては、英語で事の次第を説明した報告書を出せ、と、DHLに依頼。
さすがにDHLもこれは受けた(受ける前に受けてもいいもんかどうか電話の向こうで上長に相談してたっぽいが)。
翌22日、英文報告書が私宛にメールで届いたので早速チェックしたところ、私が関税の支払いを「拒絶した」ことになってる。
それじゃ私の責任になっちゃうじゃん(事前にチェックしてよかった)。
というわけで、「ここが正しくないから書き直してください。私は『関税の二重取りはおかしくないか調べてほしい』と云っただけだし、必要なら支払うとも配達員に伝えたはず」との旨を返信した。
DHLからの返信には、いま、担当した配達員が出払っているので、彼が帰社して確認を取ってから書き直す、とあった。
くそ~、こんなことなら一筆書くか、配達員とのやりとりを録音するか、しておくべきだったか~。
まさかこんな面倒な事案に発展するとは思わなかったんだよ~(泣)。
さて、DHLとごたごたしている間に、相談のため、ほか2か所とコンタクトを取ってみた。
1つ目は、クレジットカード会社である。
ショッピング保険が効かないかどうかの確認をしようと思ったのだ。
結論から云うと、不可だった。
決済が4月で、半年以上経ってしまっているので、もう無効なのだ。
これは自分にとって新しい発見だった。
そうか。
そりゃそうだよね。
ショッピング保険にも有効期限があるんだ、勉強した。
ちなみに決裁したカードは購入してから120日以内だった。
ほとんどのカードは90日以内のようなので、海外から個人輸入をするような際に、ショッピング保険を適用しようという場合は要注意だ(船便とかね)。
カード会社のお姉さんは「それ以外にも何かできないか」と親切に調べてくれたが、残念なことに時間が経ちすぎていて、補償は何も得られないようだった。
(ちなみにこのとき使ったのは、セゾンアメックスゴールドカードだった)
2つ目は、在住区の消費生活センターである。
こういうケースってあるの?
相談が寄せられてたりしないかな?
そしたら参考になる情報を聞けるかも?
と、思って電話。
まぁ、結論から云うと、国外のケースなので手に余るようだった。
というわけで、「越境消費生活センター」というところを紹介され、ホームページのフォームから相談内容を送信した。
回答が来るまでに4~5日かかるらしい。
ということを一日のうちに会社勤務の傍らこなして、その翌日1月23日。
午前中、DHLから電話があり、
「もう一度調べてみたところ、箱は廃棄してしまったが中身はまだ無事だった」
ということで落着した。
(配達員に確認したら「必要なら払うって云ってましたよ」みたいな結果になり、こりゃまずいと思って必死で調べたんじゃないかと悪意の憶測)
ありがたい話だったが、もうDHLに対する不信感MAXだったので「ありがとう」が口から出てこなかった。
あんな高額の送料(たぶん同業のなかで一番高値)を取っておいてこの体たらくって、金輪際DHLは使わないし、他人にも絶対に勧めないぞ。
支払いがあるため(宅配ボックスを使えないから)1月26日土曜日に配達してもらい、再び関税を支払った。
そうしてやっとのことで無事にジャケットを手にすることができたのだった。
ちなみにジャケットの包装(専用の袋)には一本、切れ目が入っていた。
DHLが箱を廃棄するときにカッターで切った痕だと思う。
ジャケットが切れてなくてよかった~。
ああ、疲れた。
その後、越境消費生活センターからメールが届いたので、返信で簡単に事の顛末を説明し、相談を終了した。
まあ、センターの人が丁寧に書いてくれたメールの内容を見ても、Baubax社に「もう一回送れ」と交渉する以外に何もやりようはなさそうだった。
英語でのやりとりは頑張ればできるけどめんどくさいし、何がいけないって、Baubax社はアメリカだが、発送元は香港なのだ。
倉庫と発送を別会社にアウトソーシングしているんだよね、きっと。
つまり発送に関してはBaubaxの落ち度じゃないわけで、そうすると請求しても送ってもらえない可能性も高いんじゃないかと……。
交渉の必要がなくなったことは本当によかった。
いやもう、数日の間にいろいろお勉強してしまった(人生勉強)。
以下が、今回得た教訓である。
- Kickstarterなどクラウドファンディングで製品を調達する場合、期限の問題によりクレジットカードのショッピング保険は効かないと思った方がいい。
- 返品交換を行う際、先方に「(関税が再度かかってしまうから)交換品であることを荷物に明記してほしい」と伝える必要がある。
- そもそもサイズ違いによる交換が発生するようなもの(衣服や靴)は、「ここでしか手に入らない」ことがわかり(たとえば今になって調べたらBaubaxのジャケットは若干高額ながら日本のAmazonでも売られていた)、「どうしても欲しい!」という場合を除いて、できるだけクラウドファンディングで買わない方がいい。事案が発生したときに超めんどくさいから。
- 何よりも、こうした厳格な保証のない手段で商品を調達するにあたっては、「全額パアになる」ことを覚悟して、それに耐えられる金額までしか投資しない方がイイ。
- 商品への期待は7割程度にとどめた方がいい(感じた期待×0.7の出来上がりでも買いたいかどうかを考えた方がいい)。
- DHLのような大手国際配送業者は「発送元が顧客」なのであって、配送先の個人のことは「お客」にならない。「何かあったときには責任を持たない」方針で動くことを覚えておいた方がいい。
昨今、情報の確保は簡単になったが、モノを確保するのはまだまだタイヘンなのだなあ、と、しみじみ思った。
注文は電送できても、ジャケットを電送するわけにはいかないもんなあ。
Kickstarterは「夢を買う」ようで楽しいけど、こういうトラブルもあるってことは、よくよく認識しておかないとイカンですな。
でもって、肝心のBaubaxのジャケットは、季節的に寒すぎるためまだ使っていないのだが、「期待×0.7」くらいの出来上がりだった(笑)。
これについてはいずれ別な日にレビューするかもしれない。
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