【展示】山種美術館 ブロガー内覧会【開館50周年記念特別展】「山種コレクション名品選Ⅱ 浮世絵 六大絵師の競演 ―春信・清長・歌麿・写楽・北斎・広重―」
友人に誘われて、山種美術館の「ブロガー内覧会」という企画に参加してみた。
まずはこの企画展(地下階)を鑑賞しながら、特別ゲスト・藤澤氏によるギャラリートークを楽しみ、その後、各自フリーで鑑賞。
30分後には一階の会場で、お茶菓子をいただきながら(料金に含まれている)、ふたたび藤澤氏によるスライドレクチャーを堪能する。
最後にもう一回、フリーで鑑賞してもよい、といった流れだった。
実際にはフリーの鑑賞時間は正味30分くらいだったのではないかと思うが、トークもスライドレクチャーもしっかりあった割に、会場がコンパクトなおかげで浮世絵の鑑賞も一通りきちんとできた。
また、展示も、藤澤先生の一言コメントパネルがあったり、浮世絵の技法をちょっと説明するパネルがあったりと、なかなか丁寧なつくりだった。
とくに、東海道五拾三次をまとめて見られるいい機会(しかも初刷り?)なので、広重ファンにはイチオシかも。
太っ腹なことに、指定された絵画以外は写真を撮ってよろしいとのこと(ブロガー内覧会限定のようなので、現在の展示鑑賞では真似しないでください)。
というわけで、あとは写真でご紹介。
齢七十を超えて描かれたものとは思えない。
春信のころは、浮世絵は一枚が4000円くらいで、どちらかといえば好事家向けだった。
それが幕府の条例により単価がどんどん安くされていく(もちろん技術の進歩もあったわけだが)にしたがい、庶民に広まっていったっぽい。
どれもわかりやすい大首絵。
この浮世絵は八代目森田勘彌のほにゃらら(長くてめんどくさいので割愛)。要するに歌舞伎役者の絵。
背景には「雲母(きら)摺り」といって雲母入りのうす墨が塗られている。
人物を木版で刷ったあとに紙でマスキングして、その上から刷毛で塗るという面倒なひと手間がかかるわけだが、暗い歌舞伎小屋の中でぼうっと浮かび上がるように目立つ効果があったのではないかという話。
このタヌキの妖怪みたいなのはイヌだって(お座敷犬)。
「こんな細かいの、彫り師が泣いちゃう」と思ったら、この毛割り(または毛彫り)の部分は彫り師任せなんだそうだ(と、「毛割(けわり)」の説明パネルに書かれていた)。
自発的にやってるってことは、こういう細かい作業が好きなのか? いくら細かくても無問題?(笑)
富士山が絵面から飛び出している。
広重にしてはめずらしく「冒険」している感じ(笑)。
「梅若菜 丸子の宿の とろろ汁」と、芭蕉の句に詠まれた、名物とろろ汁を描いている。
これって、読者の「イキ」っぷりを試してるような気がするなぁ……(芭蕉さんの句を知ってりゃピンとくる、言わずとそいつが江戸っ子の「粋」ってもんよ、みたいな)。
川面が波立つのは「わかりきったことなので描かない」のが浮世絵の美意識なんだそうで。
写実を旨とする西洋絵画では、川面の波立ちを描かずにいられないんだそうだ。なるほどね(笑)。
「拭きぼかし」と呼ばれる技法を多用した作品。
空の墨、水面の藍、松の葉の墨に拭きぼかしが施されている。
ただの刷り物とは思えない表現の豊かさ。
しかし、広重って雨が好きだねぇ。
火消同心出身だから「水」をたくさん描いたってホント?(笑)
ちなみに山種美術館にある《東海道五拾三次》は、画帳だったものらしく、色合いがよいらしい(冊子状に重ねて保管されていたものだから、日光や空気との接触が少なくて色の保存がよい、ということらしい)。
花は「波の花」。洒落てる。
紫は、ツユクサの青とベニバナの赤を掛け合わせて作られる植物性の絵の具だったため、日焼けするとあっという間に色があせるらしい。
岩井半四郎は要するに女形。艶やか。
上の作品と同じく「紫色」の状態がわりといい。
ちなみに春章は勝川派の始祖であり、葛飾北斎の(最初の?)師匠でもあったらしい。
こういう細かい紋様が好き。背景の唐紙の模様とか。
さりげなくカッコいい。
熱心な先生なので怒涛のスライド100枚くらい。
こういうシンプルな意匠って好き。
シンプルな分だけ味わい深いというか、無駄なくデザインセンスが絶妙というか。
一つだけ文句を云わせてもらうと、展覧会のタイトルが長すぎますデス(笑)。
とくにSNSでの拡散を目するなら、略称も作るべきじゃないのかな~。
ブロガー内覧会の規程どおり、この日記の見出しも展覧会の名称をフルで示したけど、長すぎてだれも覚えないと思うな……。
ああ、もう一つ文句があった(笑)。
文句というか提言というか。
「ゲストの写真は軽々にアップするな」というお達しを最初にすべきだと思う。
小さい画像や、後ろ向きなど顔がはっきりわからないものは問題ないが(自分もわざとそういうのを撮るようにしている)、お顔が明確にわかってしまう写真は、本人の承諾ナシに載せるべきじゃない。
このへんを遠慮しないブロガーは結構多いらしい。
そうそう、「遠慮しない」といえば、配布されたレジュメも作者の許諾なしに掲載すべきではない(自分の言葉に直して語るならOK)。
これは著作権が絡むので本来は当たり前の話なのだが、最近はそれを理解していないブロガーも多いとか。
この2点については、主催者が最初にしっかりと注意すべきである。
その他の点は問題なく、なかなか面白い企画だった。
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コメント
はじめまして
私も内覧会、参加しました。
ゲストのアップ写真は、私も気になりました。これまでも、主催者側の館長さんなどの顔写真は投稿されていたので、今回のゲストの方の写真については、撮影、掲載許可をあらかじめ得ているのだろうと思っていました。
レジメの問題だけでなく、HPの解説、パネルや図録の説明などの掲載はいいのかな?と思う部分があったので、以前、確認したことがあるのですが、出典を記載すればOKとのことでした。
レジメだけでなく、今回はスライドレクチャーの投影画像も著作権がかかわると思われますが、確認したところ、開催風景なら問題ないとのこと。内容がわかるような拡大写真で、その内容について文章で触れるのもOKだそうです。ただ、全体を追うようにアップしたりするのはダメとのことでした。
このような内覧会においての一般的に考えられるルールと、個々がとらえている倫理観。そして、主催者が考えているルールというのがあって、そこにずれがあることを感じさせられます。許可されていること、いないことを明確に伝えることが大事だと私も思いました。
以前、配布資料の撮影禁止の解説図を、会場の見取り図として写真撮影してアップしたところ、ご遠慮下さいと注意がありました。ダメなことに対しては注意されるという認識をしていたので、掲載されたままになっていることは、基本、OKなんだと理解していました。
ブロガーを使って広めることが目的。ゆえに、主催者側の関係者の顔写真については、うるさくは言わないというのが、現状のように感じられました。
投稿: コロコロ | 2016年9月17日 (土) 13時44分
コロコロさん、丁寧なコメントをありがとうございます。
今回特に問題だと思ったのは、講師の方が美術館外から招待されたゲストだったからです。
レジュメも当該美術館のキュレーターさんによるものならば、「美術館所属の成果」で済みますが、ゲストの場合はいってみれば彼/彼女の個人的な知的資産であり、「主催者側だから」でくくられるべきではないと思います。
もちろんそんな区分けをみんながわかるはずもないので(全員主催者に見える)、この点を主催者である山種美術館が告知すべき、というのが私の考えです。
ちなみにゲストの先生のお話ぶりだと、「そうした点もフリーにしてよろしい」などという契約をされたわけではなく(つまり「掲載可」と美術館側が回答したなら契約外の甘えである)、ご自身も写真のことを少し気にされているようでした。
難しいけどみんなで節度を持って楽しく観覧したいですね。
投稿: 苫治安@管理人 | 2016年9月19日 (月) 20時46分