【舞台】「Q: A Night at the Kabuki」(東京芸術劇場、東京・池袋)
時間が経ってしまったので簡単に(現在10/7)。
「再演」ということはわかっていたが、どの演目の再演なのかをよくわかっていなかった。
始まった瞬間に「あっ、このツライやつだったか!」と、ちょっぴり後悔(だって見ててツライんだもん)。
もともとはロックバンド・クイーンの楽曲で舞台を作ろうという趣旨だったんだと思うが、そこにシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を平家と源氏の対立というかたちに持ってきて、さらに後半は「もしもロミオとジュリエットが息を吹き返していたら?」という世界線を展開する。
(舞台上は「ロミ夫」と「ジュリ江」とかって和名っぽくなっていたと思うがメンドクサイのでロミオとジュリエットとして書きますです)
……なんかこうやって言葉にすると別にツラくなさそう、というかむしろラブロマンスっぽく見えるかも。
でもそこは野田なので。
ガシガシ行きます。
後半のロミオとジュリエットはそれぞれ「平和のシンボルとして死んだんだから今更生きてるってばれたらまずい」というそれぞれのお家の事情により、まったく自由がない。
恋人のお墓参りにも行けずくさくさしているうちに、若気の至りで、ロミオは戦争の前線へ、ジュリエットは尼寺(前線の救護部隊)へ身を投じる。
その後、源氏が勝利して平家側だったロミオは(盲目になってしまった状態で)強制収容所へ送られ、地獄の日々を送る。
一方、ジュリエットは源氏側だったので頼朝に庇護され、不自由なく生活を続ける(ハンガーストライキをしていたかもしれないが体制に刃向かいはしない)。
その強制収容所の描写が悲惨で。
なんだろう。
あとになって考えてみると舞台上に骨と皮だけになった役者さんがいるわけもないのだが、そのイメージで見ていたし、かなりリアルにその窮状をイメージしていたと思う。
そしてその悲惨な現実をロミオたちが語るのに続けて、ジュリエットが「そういう手紙は届かなかった」と声高らかに断ずる。
これが何度も何度も続いて、初演のときは聞いていてただ哀しかったけれど、今回はそれを何度も何度も何度も力強く発声する松たか子の胆力にただただ恐れ入ったのだった。
すげえ。
他の俳優さんたちも総じてリアルで容赦ない感じだったし、なんといっても役名のないモブたちが凄いのだった。
大勢で車か馬車かに乗って移動するときのみんなの体の揺れ。
強制収容所で配給の窓に張り付くさま(リアルでこわかった)。
どれもこれも、大道具なしで大道具をはっきりとイメージさせる、力にあふれたマイムだった。
彼らの力なくしては、この舞台は成り立たないんだろうな。
というわけで、今回も凄くツラかった。
舞台としては素晴らしいが、このご時勢ってのもあって、物凄くツラかった。
ツラかったけど、終幕と同時に立たずにいられなかった。
スタンディングオベーションって、そういうものだよね。
「そういう手紙」が届く世界でありたいと思った。
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