【舞台】STRAYDOGS「夕凪の街 桜の園」(池袋演劇祭参加作品)
時間が経ってしまったので、簡単に(現在10/16)。
縁あって観に行ったもの。
総合的にかなりレベルの高い舞台だったと思う。
特に、この原作は単行本が出た当初から知っていて、ものすごく好きな本だし、いまでも場面を思い出すと泣けてくるくらいの強い印象を抱き続けているしで、そういう「原作を知っている」ニンゲンに堪え得るものなのかどうかはとても不安だったのだが、杞憂であった。
オリジナルの部分(お好み焼き屋がらみ全部)も取り混ぜながら、作品世界をうまく表していたと思う。
出演者はみんなセリフの聞き取れるレベルだったし(基本中の基本だがとても重要)、そりゃまぁ冒頭の凪生は年齢の割に喋るのが早すぎるとか細かい不満がないわけじゃないものの、総じて演技が上手かった。
演出も、戦後と現代、そして戦後の登場人物の想起場面と現代の登場人物の思い出の場面といった多重の時間がごちゃごちゃにならないようになっており、この点で非常にうまかったと思う。
そんなわけで、途中までものすごく満足していたのだが、皆実の死から先が冗長だったのがネックで、「まだ終わらないのかな~」と思いつつ見たため、最後には冷めてしまった。
どうも「皆実の死」と、最後の「凪生が赦される」ところの二箇所ともをクライマックスにしようとしたため、結局焦点がぼやけてしまったようなイメージだった。
得られようとしていたカタルシスが雲散霧消した感じ。
「皆実の死」から先は、どうも「欲張って詰め込みすぎ」だったのではないか(若さゆえの脚本か?)。
よしんばカタルシスの頂点として「皆実の死」「凪生が赦される」の二つともを並び立たせるにしても、「皆実の死」のあとどんなに長くても15分以内に舞台を終わらせるべきだった。
この点では脚本・演出に関して、非常に残念だった。
あとは、皆実のパンプス。
ピンヒールはないでしょ。
いつの時代だよ。服がキレイなことは百歩譲るとしても、靴はアカン。
こういう部分でリアリティを削ぐようなことはやめてほしかった。
もうひとつ、コロスのこと。
皆実パート(つまり『夕凪の街』のパート)でモノローグをコロスに語らせる手法は、非常に上手いと思った。
しかし、怒鳴るのは違うと思う。
「強く語る」べき部分だけれど、「怒鳴る」のとは違うだろう。
怒鳴ったらだめだ。
あれも、手法的には唸らされただけに(怒鳴ってなければもっと豊かな世界になったろうに)、残念だった。
余談だが、本公演のパンフレットの最後に演出家が文章を寄せていて、そのなかで広島に下見に行ったとき、タクシーの運転手と話をするくだりがあるのだが、不思議なことに全く同じ話をすでにどこかで読んでいた気がしてウンウン悩んだ。
あっ、もしかして、《この世界の片隅に》の片渕監督がホームページかどこかに掲載していた話とそっくりなのかも?
こうの史代作品が広島の人たちにとってどんな意味を持つものか、わかるエピソードだ(二人を乗せたタクシーの運転手が全くの同一人物でもおかしくないくらい、そっくりな会話のように記憶している……怪しい記憶だけど)。
それをちゃんと受け止めて作られた作品であることは、しっかりと伝わってきた。
そして「商業路線に乗っていない演劇って、実はレベルの高いものが多いんじゃね?」というように自分の認識をすっかり改めさせてくれた作品だった。
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