【舞台】シス・カンパニー「ワーニャ伯父さん」(新国立劇場、東京・初台)
ものすごく時間が経ってしまったので、行った記録だけ(現在9/27)。
しっとりとして良質な舞台だった。
いやもう、人生ってツライわ。
なんで田舎の農園の人々が都市生活者のために必死で仕送りしなけりゃならないのか?(それも感謝すらされないのに)
もしかしてロシアってこういう図式だったのかな。
リアルに考えると空恐ろしい。
もちろん、都市による地方の搾取なんてことはどの国でも(日本でも)起こっていることなのだけれど、この舞台ではものすごく明瞭にその図式が頭に入ってきちゃって、見ていて辛かった。
都会人らには都会人らの鬱屈した思いがあるようだったが、前提としてこの「搾取」があるので(田舎の富を吸い上げての都市生活の上に成り立つ悩みゆえに)、どうしても同情できない。
ちなみに「教授」の鬱屈は半分以上が若い後妻をもらったせいだと思うな、個人的には。
前提も何も関係なく、自業自得で同情の余地なし(笑)。
最後、「俺は本当に辛いんだよ。わかってくれよ」としみじみというワーニャ(伯父)を、姪のソーニャがいたわりながら静かに諭す場面で終わるんだけど、その彼女の静かな言葉が重いの重くないのって。
自分の才能も可能性も「歳月」に摘み取られ、だれにも感謝されないまま来る日も来る日も同じように労働を繰り返し、辛い日々を耐えて耐え抜いて、それが終わってやっと神に召されたあとにこそ幸福が待つのだと。
正しく生きるって、なんだろう。
ソーニャやワーニャは正しく生きていると思う。
でも正しく生きていても、幸福からは遠いのだ。
死んでやっと手に入れられる、それほどに遠い。
じゃあ、正しく生きるって、なんだ?
よくよく考えてみると、この戯曲は登場人物がだ~らだ~らと自身の鬱々とした思いを述べ立てるだけのものである(笑)。
それにしては全く退屈しなかったし、それどころか観劇の印象としては十分に起伏があったように思えた。
このへんは演出と、役者の技量によるところが大きいんだろう。
そもそも豪華キャスト(実力的にみての豪華キャスト)につられてチケットを取ったようなものだ。
十分、満足した。
KERAは古典と相性がいいような気がする。
KERA meets CHEKHOV シリーズの前2作は見損ねたけれど、次作はちゃんと見に行くようにしようっと。
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