すご~く時間がたってしまったので簡単に(現在8/25)。
そしてネタバレが嫌な人はここでストップ。
あとは、ロードバイク好きやアームストロングのファンもここで止めてください(私自身はランスにもロードレースにも思い入れがないので結構辛口の感想になってるから)。
無料券があったので自転車好きの友人と見に行ってみた。
自転車レース「ツール・ド・フランス」を七連覇しながらも、薬物使用が明るみに出てタイトルはく奪、競技から永久追放されたランス・アームストロングを描く伝記ドラマ。
「勝利に執着するあまり道を踏み外していった男の実像や、スポーツ界の闇を映す」作品らしい。
主演のベン・フォスター(ランス・アームストロング役)が見せるその「玉虫色の表情」(だれだったかこの表現を使っていたがまさにピッタリ)はかなりイケてた(実像っぽいという意味で)。
心からガン患者たちを支援する温かみを示しつつも、薬物使用に関わる証人やジャーナリストらには冷酷で全く容赦ない。
はっきりいってやり口(ただの恐喝)はアンフェア。
「スポーツマンなのに?」と思ったけど、試合もアンフェアな状態で臨んでいたわけだから、まるごとアンフェアってことでしょうがないか~(笑)。
薬物使用をどこまで許容できるかはおくとしても、周囲に対する不誠実かつ傲慢な対応は、とてもニンゲンとして許容できるものではない。
いや、許してはいかんのだ。
(ドーピング自体は難しい問題なのでここではスルー……)
ここで、ランス寄りに映画を撮るなら、そうした彼の闇の部分は「彼の弱さから出ていたのだ~」的に描かれるわけだが、この作品ではそれはない。
じゃあ、徹底した悪役や暴君のように描かれているかというと、そこまでの酷さもない(ユーザーレビューで「そっちの方が真実らしいのでそこまで描いてほしかった」的に書かれてもいたが)。
要するに、作品自体が「玉虫色」で、よくもわるくも観客に対する「解」の提示がない。
これは評価が分かれるところだと思うが、まぁ、黒一色やら白一色やらの都合のいいニンゲンなんて所詮おらんわけで、限りなくグレーな人物として描いたところはリアリティを重視したからだろうと個人的には解釈している。
割り切れないものは残るけどね。
あとは自分で考えろってこと?(不親切ではある(笑))
それにしても、スポーツ界の闇の深いことよ。
自転車レースは他の競技よりもドーピング検査が超絶厳しいと聞きかじっていたこともあって、衝撃的だった。
しかも最初の最初からだよ。
「最初」って、ツール優勝の初回もそうだけど、ガンにかかる前からってことだよ(そもガンの遠因も……という監督のほのめかしなのか)。
その闇の事実を隠ぺいする主催者もなぁ……。
なんつーかもう……馬鹿にされている気分。ファンはちゃんと怒るべきだと思うよ。
それにしても、自分の身体をあんなふうに粗雑に扱えるなんて、私には想像もできない。
ホラー映画もかくやの怖さだった。
勝利のためとはいえ、よくあんなオソロシイことを平気でするよなぁ?
だが、それを「勇気」とはあえて呼ぶまい(むしろ「妄執」の所産であって、「蛮勇」ですらない)。
ロードバイク乗りからは描き方に異論もあるだろうが、まぁ、考えさせられた一作。
そういえば友人が、ランスが最初に穴を観に行ったときと、最後に穴を観に行ったときとでは、乗っていった自転車の価格がまるで違っている(要するに後のヤツのほうが高価)と云っていた(笑)。
そういうところも作りこまれているようで、なかなか面白かった。
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