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2014年10月25日 (土)

【舞台】「嘆きのベイルート」(シアターX、東京・両国)  #嘆きのベイルート #シアターカイ #ピープルシアター


もう昔のことになったので、うろおぼえでざっと(現在11/18)。
だいたい、知り合いが出ている舞台の感想というものは書きにくい(笑)。
でもまぁ、正直に書いちゃうよ今回は。
しょせん「シロートのたわごと」なので、気にしないように。

内戦下のレバノン、ベイルートが舞台。
アルメニア系の少年バッサームと幼馴染のジョルジュの二人が主人公だ。
彼らはカジノのあがりをちょろまかしたり、ガソリンを盗んではバイクを乗り回す。
死と隣り合わせのベイルートでも、若者がやることは似たようなものだ。
やがてジョルジュはキリスト教民兵組織に引き抜かれ、いろんな意味で「前線」に出てゆく。
一方、バッサームは爆撃で母親を失う。
苛酷ながらもノンポリな日々(イデオロギーの確立した人間からすれば「無節操」な日々)を過ごしつつ、国外への逃走をますます求めるようになり……。

といった感じのあらすじだったと思う。
今回の演出ではバッサームが主人公であり狂言回しである。
ジョルジュも一応ダブルで主人公なのだが、「得体のしれないヤツ」のままという演出なので、内面が抉られずに終わってしまい、そのせいで脇役的な性格になっていた。
あくまでもバッサームの視点を通して語られるため、ジョルジュが抱える闇の深さは、最後に一瞬きらめき、そこで露わになるだけだ(まぁ、それでも充分に闇を想像できたと思うけれど)。

スピード感のある舞台だった。
まさに、場面から場面を駆け抜ける感じ。
頭のいい舞台装置が用意されていて、場所の移り変わりは非常にスムーズに理解できた。
ただ、事件の起こらない場面がないため(笑)、逆に盛り上がりに欠けた。
したがってカタルシスも得にくい。
まぁここの劇団は社会的問題を顕わにし突きつけることを主眼としているようだから、内面だの掘り下げだのから逆転して出てくるような衝撃は、求めるのが筋違いなのかも。
キライじゃないんだけど、詰め込みすぎな気が……。
たとえば、バッサームに焦点を合わせるなら、最後の渡航後のエピソードは要らなかったんじゃないかと思う。
あの部分は、ジョルジュという存在に焦点を合わせた演出でこそ生きてくるのでは?

そう思ったのは逆に云えば、バッサームが旅立つところの演出がよかったからなんだけど。
舞台の中央奥には垂直に梯子がかかっていて、それまでは舞台装置としては何の役目も果たさず、こちらもほとんど意識しなかったんだけど、バッサームがジョルジュを置き去りにして(あるいは死に追いやって)ベイルートを去るその瞬間に、その梯子が切って落とされる。
その瞬間に、「あ、ヤコブの梯子だったんだ」と得心した。
慈悲深いカミサマが梯子を落とすかどうかは怪しいので、やはりバッサーム自身が天国への道をみずから絶ったのかな。
地獄行きを覚悟して、それでもベイルートから立ち去らずにはいられなかったのか。
などと瞬時に考えさせられる、「あっ」という発見のある場面になっていた。
ここで終わらせれば「バッサーム編」は完璧だったと思うのに(笑)。
「ニンゲン」ではなく「社会現象」をクローズアップしようとするゆえに、そうした視点にならないのかも。

役者さんは上手い人が多かった。
前回の『蝦夷地別件』よりも全体にレベルが高くなっていた気がする。
『蝦夷地』よりもセリフが聞きとりやすかった(あのとき全セリフを問題なく聞けたのは、坊さん夫婦とこわい母ちゃんだけデシタ)。
今回一番印象に残った役者さんは、民兵のハディド役だったかな。
臆病な、実は人のいい民兵に向かない民兵さん(笑)。
カッコいい役でもなんでもないんだけど、私にとっては存在感があった。

バッサームは……実は別件で師匠筋にあたる方なのでめったなことは書けないんだけど……ガクブル。
いっか。私的日記だし。もう時間経ってるし。
『蝦夷地別件』にも出演されていたが、あのときよりも横や後ろを向いたときのセリフが聞きとりやすくなっていた。
私が観に行った日はすでに前楽だったが、声もしっかりして、息切れせずに駆け抜けている感じだった(あとでご本人から体力をギリギリもたせているようなことを聞いたが、全く問題なさそうだった)。
あとは、セリフの強弱を出せるようになればもっといいな~(特に「弱」)。

いろいろ書いちゃったけど、嫌いな演出ではないので、またご縁があれば(エラソーですみません)。

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