【舞台】NODA★MAP「エッグ」(東京芸術劇場、東京・池袋)
青字のところはネタバレがあります。
まだ観ていない人は読まないことをオススメ。
(だいたいこの部分は観念的になっちゃったので、読んでも楽しくないかも)
最初は、オリンピック熱狂の様を哂っているのだと思った
マスコミのアスリートに関する過熱報道は、とりもなおさずお茶の間にいる我々の愚昧ぶりを映す鏡だから。
あるいは、スポーツの祭典への傾注を利用した、「総体」の意識操作に警鐘を鳴らしているのかとも思った。
それらもあながち間違いではあるまい。
彼は、これまで「大衆」の「総意」によって醜く歪められる現実と、それによって転落する人生も描いてきたのだから。
だが、話はどんどん変わっていく。
「男のスポーツ!」のように思われていたものが、実は「起源は女性」だったり、戦後の東京オリンピックかと思われていたものが、実は開催されなかった戦前の東京オリンピックだったり。
当然、日本が舞台と思われていたのに、「満州」であったり。
一般的に起こりやすい「思い込み」を逆手に取った、逆へ逆へと向かう騙しの展開。
「後世に語り継がれる」ことが、いかに歪められうるか。
舞台をすべて通して観た我々観客にも、結局のところ、どこからどこまでが主人公「アベ」の実像なのかがわからない。
「イメージのすり替えが行われたらしい」ことが提示されるために、「本当はこうじゃないのかも」と懐疑の姿勢で臨めるにすぎない。
そしてそうした歴史的事実の「すり替え」の暴力は、あまりに強力で、我々は避けることができない。
そのことも親切に気づかされる仕組みになっている。
単純な「反戦」のようにも見えるが、実は違う。
それは最後に演出家が語る言葉に凝縮されていた。
過去と向き合わないことは、愚かだ。
現実の真の姿を知ろうとしないことは、愚かだ。
この二つを遂行しなければ、我々は再び同じ過ちを犯すだろう。
俳優陣に関してちょっと述べておくなら、みんな「かわいらしさ」と「嫌らしさ(人間的な意味での)」との同居を上手く表していたと思う。
特に橋爪功とか(笑)。
かわいいオジサンだったのに、蓋を開けてみりゃトンでもないむにゃむにゃ。
秋山奈津子は安定のクオリティ(この人に関しては毎回何の心配もなく見られる)。
あとは、深津絵里が見事だった。
椎名林檎の劇中歌もよかった(林檎らしくて)。
まぁ、百聞は一見にしかず。
どうぞ観に行ってください。
▼公式サイトはこちら
http://www.nodamap.com/productions/egg/
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