【舞台】「トロイラスとクレシダ」(彩の国さいたま芸術劇場、埼玉・与野本町)
蜷川シェイクスピア、オールメールプログラム初の悲劇。
まぁ悲劇といっても、三大悲劇と比べると悲劇度は低い。
悲劇は悲劇でも、「破滅」ではなく「喪失」止まりだからな。
場内に入るとまず舞台から大量のひまわりが目に飛び込んでくる。
ちょっと唐沢マクベスを思い出した(あのときは竹だったが)。
あらすじ。
トロイの若い男女が好きあって結ばれるが、人質交換のために娘がギリシャ方へ連れ去られてしまう。
敵陣の娘に会いに行った若者が目にしたのは、ギリシャ軍の男になびいた女。
若者は愛をなくし敬愛する兄(ヘクトール)を亡くして悲劇の主人公となって終わる。
実際に彼が破滅するのはこの後になるわけで(トロイの王子だから破滅は確定)、そのため悲劇の度合いがやや淡く感じられる。
なんというか、山場を作りにくい、難しい脚本のようだった。
登場人物はあちこちで喚くが、場面自体は淡々と消化される。悪い意味じゃなく。
終わってみて「ここで終わりなのかー」という脚本に対する物足りなさはちょっぴり感じたけど、舞台全体に対しては何も悪いイメージがなかった。
脇役が凄かったからなー。
特にテルシテス(道化)がめちゃくちゃ上手かった。
ユリシーズ(オデュッセウスですな)も良かったし、困ったことにアエネアスがカッコイイ(なぜ困るかというと、自分にとってアエネアスはカルタゴのディードーを捨てた嫌な男のはずだったので(笑))。
英雄アキレウスのキャラ作り(主にビジュアル面)もよかった。
カサンドラの内田滋は相変わらず文句なく上手いんだけど、やっぱりもっとコケティッシュな舞台で見たいなー。
(オールメールはやはり喜劇にしてほしいなー…)
ともあれ、面白かったんだと思う。
見終わったあとに「これはちょっとどうよ?」と思う部分が何一つなかったから。
盛り上がりには欠けるものの、筋立てどおり、シンプルにまとまっていた。
キャストもスタッフも自分なりにいろいろ工夫しているんだろうが、それをあからさまには見せず、話の中に収めて浮かせないところに好感の原因がありそう。
近頃の蜷川シェイクスピアには、「これはちょっとどうよ?」という浮いた部分が必ずあったが(なかったのって結構久しぶり)、元の路線に戻ったのかな。
欲を言えば、主人公のトロイラス(山本裕典)が、もーちょっと台詞が聞き取りやすいとよかったな(笑)。
恋する馬鹿男ぶりは楽しかったんだけど(笑)。
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