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2012年5月 2日 (水)

【舞台】ヤングヴィック劇場「カフカの猿」(シアタートラム、世田谷・三軒茶屋)

まず一声、叫ばせてほしい。

千代田線の馬鹿野郎ーっっっ!!!!!

余裕で到着するはずが、千代田線の遅延のせいで20分遅刻ですよ。
「お客様の荷物が挟まった」とか言ってたから、原因は直接千代田線のせいじゃないにしても、

対応が悪い!!!!!

遅れてることをずーーーーっと放送しなかった。
ひどいんじゃないか、あの対応?
貴重なチケット代、返せ!!!!!
もうお前には乗らん!!!!!

というわけで、3分の1ほど終わったところでやっと会場入りですよ。
運悪く(?)最前列だったので、キャサリン・ハンターがやってきて(英語で)「ようこそマダム」みたいに茶化されてしまった。

その後、40分間は濃密な観劇時間だった。

ただ、シアタートラム側が字幕を大きなスクリーンのてっぺんに横書きで出してくれたもんだから、読もうとすると思い切り上を見なきゃならなくなって、キャサリン・ハンターの演技が全然目に入らなくなる。
逆に演技だけ見てると、さすがに英語じゃ台詞の意味を取れなくなるところが多い。
翻訳自体もかなりはしょってたし。
読むスピードを考えてのことかもしれないけど、「いくらなんでもはしょりすぎだろう」と思える部分が何回かあった。
とゆーわけで、これまで経験した字幕付きの観劇ではサイアクの部類に入る字幕だった。
シアタートラムも大したことないな、と、認識を改めた(悪い方に)。

舞台自体は凄いもので、なんといってもキャサリン・ハンターが人間じゃないみたいだった。
以前、彼女が男役を演ったときに、「なんて性別をカンジさせない俳優だろう」と驚いたものだが(全く「女らしさ」がなかった)、今度は性別どころか人間でなくなっていた!!
これじゃ猿だよ、猿!!
ちなみに一緒に観に行ってもらった友人は、腰関節の位置がどう見ても人間じゃないようにしか見えなくて、ずっと冷たい汗をかいていたらしい(笑)。
私の方は、観ている間ははっきりと認識していなくて、ただ、演者が腰をかがめたような態勢でいるのを見るにつれ、なんだか気持ち悪くてもぞもぞしていたくらいだった(ときどき「背筋伸ばしてほしい」とかって半ば無意識に思ってたような気がする(笑))。
でもって、後でハタと思い当たった。
要するに、あまりに「猿」で、「人間」に見えなかったせいで、落ち着かなかったんだな~、視線が。

話の内容は、人間になった猿が学会の諸氏の前で、自分がいかにして人間になったかを発表するというもの。
彼は、アフリカで狩られて船で運ばれるとき、檻に「出口がない」ことに絶望する。
(「出口」であって、「自由」ではないんだそうだ)
「出口」を求めて彼が選んだ行動は、「人間を観察する」ことだった。
ごく単純にパターン化されてしまう船員たちの行動。
無目的的にうろうろ歩き、大きな声で意味のないことをときどき喋っては、酒を飲んでタバコをふかす。これがニンゲンだ。
彼は、苦労に苦労を重ねて、酒を飲んでみせる。あの臭くてたまらない液体を。
その後は見世物小屋へ行き、人間の振りをする、いや、人間として振る舞うことをどんどん覚えていって、今ではニンゲンとなった猿としてあちこちのパーティーに呼ばれもする。
最近ではメスのチンパンジーを飼育し始め、彼女と過ごす時が彼のなぐさめだが、こうなってみてもニンゲンを好きになれはしない。
いやむしろ、本当に嫌いなのは自分自身の「混ざった臭い」だ。
野生と、人間性との「混ざった臭い」が耐え難い。
その独白で終幕になる。

ルネサンス以来、肯定され崇められてきた人間性も、ここでは「嫌な臭い」でしかなくなる。
だがそうして貶められているにもかかわらず、傍観者(われわれ観客=学会の諸氏役)には、相手は稀な存在だが猿であって人間ではないという、まるで見世物を見ているような感覚がなかったか。
実はそれは人間性賛歌に通ずる姿勢だ。
結局われわれは人間性のなんたるかを客観視できていないのだろう。ニンゲンになった猿のようには。

しかしまぁ、問題提起は重要だけど、この舞台の最大のみどころは、やっぱりキャサリン・ハンターの身体性じゃないかな、と、思うわけで。
「脱臼する(してる?)からやめて~」と言いたくなるほどの体の動きなのだ(どこの体操選手かと思う)。
そして表情ひとつでその存在を演じわけてしまう凄さ。
ホームページに載ってたご挨拶ムービーを見たときはただのオバチャンだったのに~。
いろいろとコワイ舞台であった(笑)。

やっぱり最初から観たかったよぅ。千代田線の馬鹿ー。

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