【舞台】蜷川「シンベリン」(彩の国さいたま芸術劇場、埼玉・与野本町)
蜷川シェイクスピアの「シンベリン」を観てきた。
以下、ごく個人的な感想を。
まず長かった(笑)。
特に前半はテンポが悪くて、場面転換にもイライラする有様。
(今回の舞台美術、私はあんまり好きじゃない)
後半はそんなことを考える間もなく、「あっという間」だったけどね。
これはロマンス劇なのであって喜劇ではないんだけど、結構よく笑った。
前半は、勝村政信ひとりのせい(笑)。
バカ息子を実におかしく情けなく演じていて、その馬鹿ッぷりには全く脱帽である(笑)。
本来は主人公に対する「敵役」のはずなんだけど、あまりの可笑しさに登場するだけでウケるは、「また出てこないかな」と期待されるは、素晴しかった。
後半の笑いは、主に大竹しのぶと吉田鋼太郎のせいだった。
台詞の発声と間の取り方が絶妙なのだ。
おかげで、並みの役者なら単なる説明台詞にしかならないものが、そこかしこで滑稽さを帯びて、観ているこっちが笑わずにいられなくなる。
大竹しのぶは相変わらずモンスターだった。
いつ見ても化けもののような女優だ(善い意味で)。
窪塚洋介は……どうして毎回一本調子なのかなぁ。
どの台詞を聞いても変化が感じられない。
別に棒読みしてるわけじゃないんだけど。
ずーーーっと同じ調子で喋るので、心境がよくわからないし、感情移入できない。
まぁいいや。これ以上書くとファンに殺されちゃう……(もう遅いかも……スミマセン)。
主役の阿部寛は、ちょっとウェットになりすぎ?
この人も滑稽さを出す方が活きる気がする。
へんてこりんな役柄だったけど、つかこうへいの木村伝兵衛やってたときの方が活き活きしてたなぁ。
今回は活き活き感が足りず。役柄上しょうがないのかもしれないが。
個人的に好きな役者さんだが、魅力を十二分に発揮できているとは思えなかった。
今回の舞台で何が気に入らないって、舞台美術だ。
直前にピーター・ブルックの「魔笛」なんか観たのがいけなかったのかもしれないが(笑)。
そんな背景にする必要があるのか?
自分がすんなり入れた背景って、ベラリアスたちの岩場だけなんだけど(途中で一回引っかかって降りなくなってたいへんそうだったなー)。
途中のジュピターの登場もなんだかなー……いいのか、それで?
それって「安易」って言わないか?(装置の難度はともかく)
ジュピターの登場といえば、あそこの場面での琵琶の使い方は絶妙だった。
私にとっては、今回の音楽で最大にして唯一秀逸だった箇所だ。
世界を切り離すような音色で、それまでと異なる空間を生み出していた(なぜそれがイイのかは実際の舞台を見てネ)。
でも、その他の音響(音楽)は、イマイチだった。
特に拍子木。
うるさい。
なぜそこで歌舞伎調を取り入れる必要が?
「十分」なレベルに達していたとは思うが、「本当にそれが必要なのか?」という音が多かった。
これまで、蜷川シェイクスピアは割りと手放しで褒めてきたけど(特に美術や音楽や照明)、今回はちょっとガッカリだった。
役者さんをはじめ、舞台全体の出来がよかったから、その分、残念だ。
もっとも、今回はB席で遠くから全景を眺めていたので、来週、近くの席から見ればまた何か違って見えるのかも。
全体的に言えば「満足」なわけだし。
来週も楽しみ。
劇場のロビーには山のような花束。
これまで見た中で最大級だったかも。
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