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2011年2月17日 (木)

読書:『テンプル騎士団の古文書』

書名: テンプル騎士団の古文書 〈上〉〈下〉
著者: レイモンド・クーリー (著), 澁谷 正子 (翻訳)
価格: ¥ 777 / ¥ 777
頁数: 340ページ / 322ページ
出版社: 早川書房 (ハヤカワ文庫 NV ク 20-1)
ISBN-13: 978-4150411909 / 978-4150411916
発売日: 2009/1/30

あらすじ ヴァチカンの至宝展が開催されるメトロポリタン美術館。そのオープニング・パーティで事件は起きた。中世ヨーロッパで栄華を誇ったテンプル騎士団のマントと甲冑を身につけ、馬に乗った四人の騎士が美術館に乱入、破壊の限りを尽くしていったのだ。騎士の一人が展示物の暗号機を奪うのを目撃した女性考古学者のテスは、事件とテンプル騎士団の関係を調べ始める。だが、その裏で美術館の襲撃者が次々と殺されていった…。

なかなか面白かった。
※以下、ちょっぴりネタバレがあるかもしれないので(読んでもあまり影響ないように書いてるつもりですが)、「読む前に何も知りたくない!」という人は読まないでください。

ストーリーは面白かった。
ただまぁ、ヒロインの好みが人によってすご~く分かれるんじゃないかなぁ。
私はあんまりこのヒロイン好きじゃない。
いわゆる「あほか?」みたいなヒロイン(どう考えてもストーリーを展開させるためとしか思えない愚行を重ねるタイプ)ではないけど、自分に都合よく積極的なヤツというか……一貫して「エゴイスト」として描かれている、と、思えばいいのか?
研究者の皆が皆、こんなだと思われたら困るにゃ~。
とにかくさほど好きになれない。

あとは、デ・アンジェリスの立ち位置が、実は完璧にクリアになってない(著者はしてあるつもりかもしれないけど、なんで●●●が出てくるのかとか、なぜそこまでとか、イマイチ不透明)。
これはちょっと気持ち悪かった。

中世編は面白かった。
とはいえ、これも若干消化不良なんだけど。
細切れに挿入されるのでわかりにくいし、結局肝要な部分は現代編で語られちゃうから、う~む?
ストーリーの前提が一つの「解」であるゆえ、こういう入れ方でやるしかないっていうのはわかるけど、う~む?

そして何より、ラストが好きじゃない。
(あれ? どこが「なかなか面白かった」なんだ?)
いいのか、それで?
そのへっぴり腰のラストはいったい何事?
せっかくの……せっかくのテーマが……シクシク(涙)。
まあ……あの現代編ラストのあとに、中世編ラストを読むと(その順番になってる)、涙がちょちょぎれちゃう。それを狙ってのことなら仕方ないが(たぶん違う)。

ただ、本作に登場する「解」はよかった。
私はこの「解」の方が『ダヴィンチ・コード』の「解」よりも好みだ。
DNA鑑定とかを遡ってできない以上、ダヴィンチ・コードの「解」はキリスト者ではない私にはあまり危険性を実感できない。
こちらの「解」は、確かに波乱含みだ。
「そのくらい何さ、一人の人間がこんなにもすばらしい教えを生み出したって視点に立てば、逆に感動できていいんじゃないか」と思う向きもなくはないが、そういう柔軟な思考を半数以上の人間はなし得ないのだろう。
科学者たちが「どんな仮説もありうる」という視点に立てないのと同じように。

ああ、そうか、この「解」が面白かったから、私の中で「なかなか面白い」の評価になってるのか。
レバノン生まれの作者が、多宗教の環境下で育って、いろいろ宗教にまつわる矛盾と理不尽を体験してきただけのことはある。
娯楽作の皮をかぶっているが、まさに「宗教」(の不寛容)が著者のテーマなのだ。
もちろん、娯楽作だけあって、ストーリー展開は面白かった、というか、読みやすかった。
ただ、「解」はともかく、『ダヴィンチ・コード』に見られるようなウィットがないのは残念だった(ストーリーの重厚さにもかかわらず、どうしても笑わずにいられないようなユーモア溢れる台詞とかさ)。

映画を観るような気分で読むとちょうどいいかも。
通勤のお供にオススメ。そこそこのめり込める。

▼この本はこちら。6時間くらい?

テンプル騎士団の古文書 〈上〉 (ハヤカワ文庫 NV ク 20-1)


テンプル騎士団の古文書 〈下〉 (ハヤカワ文庫 NV ク 20-2)

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