展示:「アルブレヒト・デューラー版画・素描展」(国立西洋美術館、東京・上野)
もうすぐ終わってしまうので、開館を延長している金曜夜に、友人Mと西美(西洋美術館)のデューラー展を観に行った。
作品のほとんどが、メルボルンの国立ヴィクトリア美術館の所蔵品だった。
すごいたくさん持ってるのね、オーストラリア。
海を隔てたはるか向こうにそれだけの点数が渡っていたなんて、知らなかったなぁ。
作品はほとんどが版画であり、一つ一つのサイズがあまり大きくない。
しかもデューラーの緻密な書き込み(彫り込み?)と、作品保護のための暗めの照明とのせいで、じーっと見なきゃならん。
おかげで帰ったあと、異様に目が疲れていた(笑)。
デューラーは昔からなんとなく好きだが、どこが好きかと聞かれると実はよくわからない。
今回、展示を見て、それがますますわからなくなった(笑)。
昔は単純に「他の銅版画と比べてきれいだから好き」みたいな感じだったんだと思うんだよね。
でもこうして彼の作品ばかりをじっくり見ていると、「きれい」と言い切っちゃうのが憚られる何かがあって、それでもなお「好き」なのはなぜなんだろう?
やっぱりわからない(笑)。
さて、デューラーが活躍した地は、ほぼ同時代にプロテスタントの祖ルターを輩出する土地であり、彼自身の作品も宗教画がきわめて多い。
そうした宗教画を見ていてちょっと面白かったのが、イタリアなどで描かれるものと「場面が違う」ものがいくつかあったことだ。
たとえば、「受難」のシリーズでは必ずキリストの死のあとに「地獄への降下」が描かれるが、こんな場面は聖書にはなかったよね?
今までいろんな宗教画を見てきたけど(まぁ私ゃ記憶力は悪い方なので確実とは言えないですが)この「地獄への降下」のシーンって見たことないと思うし。
(そもそもだれが地獄へ降下しておるのだ? ユダか?)
逆に、よく描かれる場面だと思っていた、香油の場面が一枚もない(確かマグダラのマリアがイエスに香油を塗ると、ユダが「もったいない」とかなんとか言って、イエスにたしなめられるって場面)。
面白いなぁ。
「こういうのって、この地方での傾向とか流行なのかね?」と、友人Mと言い合った。
あとは、不思議なシンボルみたいなのが画面内にあって、つい笑っちゃった。
復活したイエスがマグダラのマリアに「私に触れるな(ノリ・メ・タンゲレ)」と告げる場面で、なぜかイエスがシャベルを担いでたりして(どう見てもシャベルです)。
なぜイエスにシャベル? まさか墓掘って出てきたと??
(それとも私が知らないだけで、一般的にもこの場面でのシャベルは重要なシンボルなのか?)
同じ宗教画でも、地域によっては変わるのかな~、と、考えさせられた。
(これはバッハを語るときにも言われることで、中世から近代にかけてのドイツは「田舎」扱いなんだよね。だから、都会とズレがあったってことなのかなぁ、などと思ってみたり…)
なかなか面白い展示だった。
そうそう、どの版画にも、AD(アルブレヒト・デューラーのイニシャル)のサインがある。
これを探すのもちょっと楽しかった。
ときどき D の向きが逆になっているのはご愛嬌(笑)。
そして、さすがのデューラーも(几帳面にイニシャルを入れ続ける彼でも)皇帝が発注した公的なものには AD の署名を入れていないこともわかったりして。
有名な作品メレンコリアも見られたし、よかったよかった。
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