読書:『ヘンリー六世』
書名: ヘンリー六世 シェイクスピア全集 19
著者: W. シェイクスピア (著), William Shakespeare (原著), 松岡 和子 (翻訳)
価格: ¥ 1,575
頁数: 615ページ
出版社: 筑摩書房 (ちくま文庫 し 10-19)
ISBN-13: 978-4480033192
発売日: 2009/10/7
読了は一昨日の夜だが、こちらで(そう、舞台にはあと少し読み終えるのに間に合わなかった)。
あらすじ 百年戦争とそれに続く薔薇戦争により疲弊したイングランドで、歴史に翻弄される王ヘンリー六世と王を取り巻く人々を描く長編史劇三部作。敵国フランスを救う魔女ジャンヌ・ダルク、謀略に次ぐ謀略、幾度とない敵味方の寝返り、王妃の不貞―王位をめぐる戦いで、策略に満ちた人々は悪事のかぎりをつくし、王侯貴族から庶民までが血で血を洗う骨肉の争いを繰り広げる。
まぁすでに舞台の感想で書いたし、あらすじにもあるとおり、ひたすら「血で血を洗う」オハナシ。
どこまで行っても、そう。
血を流すのを善しとしないのは、ヘンリー六世だけだが、その彼のことは読めば読むほど「情けない」と感じるようになっている(笑)。
もっとも、そうではない見方もできるけど(3/25の舞台の感想で書いたとおり)。
逆に、他の登場人物の面々は、「もうちょっとおとなしくできないのか?」と思ってしまうギラギラぶり。
欲望まっしぐら(笑)。
これはこれで現代人には馴染めない感覚だろうと思うし、私自身も「そこまで強く憎みあわないでも」と辟易したが、これもちょっと待った。
そうやって憎みあい罵り合うことを愚かしいことと切り捨ててしまっていいものか?
もちろん、争いはないに越したことはないし、憎悪による無惨な振る舞いは醜いものではある。
ただ、彼らにあって我々にないものがあって、そのものの価値も一緒に切り捨てることはできないんじゃないか?
彼らにあって我々にないものとは、【激情】である。
憎悪にしろ親子の情愛にしろ、何もかも激しい。
いい悪いは別としても、それだけ激しければ、何しろ「生きている」実感が強かろう。
羨むべき部分ではないのかなどと、つい思ってしまう。
そういえば、あとがきに書かれていたけど、この戯曲には「父と息子」の登場がすごく多い。
トールボットも息子が出てくるし、ヨーク公は言うに及ばず、ヘンリー六世も、ランカスター側も、父子の二代(あるいは三代)にわたって登場したりなんかして、どれも物凄く絆が強い。
父親と反対の道を行く息子なんて一人もいない(笑)。
あ、いたか、ヘンリー六世の息子エドワードが。
でも彼は父親によって廃嫡されちゃったから、しょうがないよね。
ともかく、父と子の話と言ってもいいくらい、この対比はあちこちで出てくる。
他のヘンリーものの戯曲はどうなんかなー。
『リチャード三世』なんか、そーゆーのはなかったよなー。
ちなみに、この戯曲は全部で三部構成。
通常の舞台三本分らしい。
これに件の『リチャード三世』を合わせた四部構成である、というのが通説らしい。
長くて疲れるけど(そして史実がフィクションとないまぜになっているので正しい歴史しか認めないタイプの人には向かないけど)、魅力的な台詞満載なので、こんな内容なのに(笑)私的にはオススメ。
ヨーク公の「死か、さもなくば王位だ」などをはじめ、いろいろ印象的な台詞が詰まっている。
▼この本はこちら。6時間くらいかかった?(訳注も全部読んだし、頁数が半端じゃないから…)
ヘンリー六世 シェイクスピア全集 19 (ちくま文庫 し 10-19)
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