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2009年9月 7日 (月)

読書:『獣の奏者』

書名: 獣の奏者〈1〉闘蛇編 / 〈2〉王獣編
著者: 上橋 菜穂子 (著)
価格: ¥ 660 / ¥ 730
文庫: 357ページ / 480ページ
出版社: 講談社 (講談社文庫)
ISBN-13: 978-4062764469 / 978-4062764476
発売日: 2009/8/12

読了は一週間前だが、こちらで。

あらすじ リョザ神王国。闘蛇村に暮らす少女エリンの幸せな日々は、闘蛇を死なせた罪に問われた母との別れを境に一転する。母の不思議な指笛によって死地を逃れ、蜂飼いのジョウンに救われて九死に一生を得たエリンは、母と同じ獣ノ医術師を目指すが―。苦難に立ち向かう少女の物語が、いまここに幕を開ける。

『精霊の守り人』の著者が書いた別シリーズ(4冊になったら「シリーズ」呼ばわりしてもいいよね)。
アニメ「獣の奏者エリン」でご存知の方も多いかもしれない。

面白かった。
もうこれだけでいいかな?(笑)

もうちょっと書くか…。

この著者の作品が面白いのは、ストーリー展開とかキャラクターとか世界観とかいろいろ要素はあるけど、なんといっても「リアリティがある」ことだ。
もうそれに尽きるんじゃないかと思う。
だいたい、文庫の最後に付属する他の作家らによる解説を読むたびに「自分はファンタジーなんてゆーものは苦手であったが、この作品は違った」論が展開されておるわけで(←もちろん異なる複数の作家によって)、それってこのせいじゃないのかと思う(笑)。
物語のリアリティは重要だ。
どうやって出すものなのか、私にはよくわからないのだけれど。
でも確実に「ある」と感じる作品と「ない」と感じる作品があって、これはまさに「ある」ハナシである。

まー、あんまり書いても読むの面倒だし、本編読んだほうがずっと実りアル時間過ごせると思うし、これ以上話すとネタバレになるかもしれないし、このへんでやめとこうかな。

一点だけ。ちょっぴりネタバレかも?

主人公のエリンは、自分以外の生物(人間を除く)に極めて深い興味を持つ。
いったん知りたいとなったら、知りたくて知りたくてたまらなくなり、時には「暴走」もやってのけるのだが(笑)、それは言ってみれば「他者」への飽くなき探究心であり、「他者」という「自己」から隔絶された存在とわかりあおうとする不屈の精神から生まれる行為である。
(まー、なんでかその「他者」にニンゲンが含まれないっぽいのが不思議だが……ニクいからかなー、やっぱり……)
「あとがき」で作者はそれを「人間の悲しい性(さが)」と記している(どう悲しいかは本編&あとがきを読んでください)。
この点については、読後に「そうだよねー」と、つい共感してしまった。
仮令(たとえ)「わからない」ことがわかっていても、少しでもわかろう近づこうと、最後の最後まで努力するべきなんだよね。
そうやって生きるのがきっと正しいんだよね(最近サボってる気がするけど)。
理知的に見える母親の一族を受け入れられないのは、彼らが「可能性」を否定しちゃってるからなんだよね。
今までは全然わからないこと、「わかるはずがない」と言われることだったかもしれないけど、明日はほんの少し、新しい何かがみつかるかもしれない。
仮令完璧に理解することが不可能であったとしても、不完全ながらどこまで完全に近づけることができるかを追う、そのことの可能性を否定することは、どんな局面でもそれこそ不可能なはずなのだ。
(関係ないけど、「研究」って本来そういう立場で行うものだよね。このタフさは作者が研究者出身であることと関係あるんだろうか?)

というわけで(?)、『守り人』シリーズが「人は独りで生くるにあらず」の物語だとすると、『奏者』は「可能性は無限なり」の物語なのだった。
「なのだった」って勝手に決めつけてスミマセン。
でも私にとってはそうなのだった(しつこい)。

しちめんどうなことを書いてしまったけど、とにかく面白いのでぜひ読んでみてほしい。

▼この本はこちら(2冊あわせて6~7時間?)

獣の奏者〈1〉闘蛇編 (講談社文庫)

獣の奏者〈2〉王獣編 (講談社文庫)

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