読書:『夜愁』
書名:夜愁〈上〉 〈下〉
著者:サラ ウォーターズ (著), 中村 有希 (翻訳)
ページ数: 348ページ / 332ページ
出版社: 東京創元社 (創元推理文庫)
ISBN: 978-4488254056 / 978-4488254063
発売日: 2007/05
あらすじ 1947年、ロンドン。第二次世界大戦の爪痕が残る街で生きるケイ、ジュリアとその同居人のヘレン、ヴィヴとダンカンの姉弟たち。戦争を通じて巡り合った人々は、毎日をしぶとく生きていた。そんな彼女たちが積み重ねてきた歳月を、夜は容赦なく引きはがす。想いは過去へとさかのぼり、隠された真実や心の傷をさらけ出す。ウォーターズが贈るめくるめく物語。ブッカー賞最終候補作。
以前、『荊の城』という作品を読んで、なかなか面白かったので、ちょっと期待して読んでみた。
まず、「ミステリー」ではなかった(笑)。
また、時代もかなり現代に近いため、あのヴィクトリア朝の物語では目立っていた「時代がかった猥雑さ」みたいなものがなくて、残念だった。
それでもガンガン読んじゃったけど。
事件があるわけではない、登場人物がカッコイイわけでもない、読んでて面白いことが何も起きないにもかかわらず、止まらなくなって次々読んじゃう。
これはなんだろか(笑)。
登場人物は、なんというか、こういう言い方したら怒られるのかもしれんが、社会的に奇形と見なされてしまう人々ばかりだ。
同性愛者たち(どちらの性も)と、不倫のカップル。
こうした存在を好きでない人は読まないほうがいい。
最初から最後までその話だから(笑)。
人間としての彼らの魅力を感じようとするか、「レズとホモの暗いハナシ」で済ませるかは、その人次第だ。
あんまり書くとネタバレになるので書かないけれど、読んでいくうちに「あれっ、この人、こんなところで……?」と吃驚させられたりする。
「あれってこれの伏線だったのか!」とか。
また、「彼は『何を犯した』のか?」といったナゾが適度にちりばめられていて、読み進むにつれてそれらが少しずつ、少しずつ、あらわになっていく。
この、ナゾの出し方が非常に上手い。
出しすぎてもつまらないし、なければないで面白くないのを、ちょうどいい具合に混ぜ込んである。
このあたりが次から次へと読んじゃう理由なんだな、きっと。
面白かった、私には。でも地味だな。
それにあのラストは、私も「ええーっ、ここで終わっちゃうのー!?」と思わされた。
なんとなく消化不良になるかも(笑)。
というわけで、同じ著者でもエンターテイメント性の高い『荊の城』のほうが一般にはオススメだが、通勤のお供にはいいんじゃないかな。
あっという間に読めちゃうような軽いヤツと違って、少し日持ちします(笑)。
▼この本はこちら。5~6時間くらい?
夜愁〈上〉 (創元推理文庫)
夜愁〈下〉 (創元推理文庫)
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