読書:『二度死んだ少女』
書名:二度死んだ少女
著者:ウィリアム・K. クルーガー (著), William Kent Krueger (原著), 野口 百合子 (翻訳)
文庫:622ページ
出版社:講談社 (講談社文庫)
ISBN:978-4062762755
発売日:2009/02
あらすじ 行方不明になった女子高校生の捜索に加わった元保安官コークは、吹雪に行く手を阻まれるが、不思議な影に助けられる。その影こそが彼女の魂なのではないか?ミネソタの大自然と家族を愛する男は、広大な谷がのみ込んでいた真相に驚愕する。アンソニー賞最優秀長編賞を受賞した傑作ハードボイルド第4弾。
読み応えがあった。
そして今、この記事を書くために貼り付けた「あらすじ」を読んで思った。
「そうか、ハードボイルドなのか。言われてみればそうだった」
オジブワ族の血を引くコークは、元・保安官だ。
あらすじにもあるとおり、行方不明になった少女の捜索に加わるが、捜索自体も吹雪に阻まれ、結局見つかったのは彼女の凍死体だった。
最初は事故のように考えられていたが、殺人であるとわかり、遺留物からコークの甥であるソレム(本来、血はつながっていないが、甥のような存在)が容疑者となる。
ソレムの無実を信じて、コークは事件を調べ始めるが、思わぬ事実が次から次へと彼の前に立ち現れて……。
アメリカ原住民のテイストも盛り込んだ、ちょっと不思議な感覚のミステリー。
あらすじのいうとおり、基本はハードボイルドだと思うのだが、オジブワ族固有のなにかが散りばめられていて面白い。
勘で事件が解決されることはないものの、そうした無形で無根拠ななにかが、否定されることなく、ヒトを導くものとして描かれている。
この描かれ方が、無理がなく独善でもない、絶妙のバランスを保っていて、上手い。
タイトルの「二度死んだ」は、繰り返し現れるテーマだ。
これまた絶妙な微かさで嵌めこんである(笑)。
さらに、ソレムと大いなる精霊あるいはキリストとの会話とか、小さな奇跡や「信仰」の問題もちょっとずつ絡んできて、独特の物語世界になっている。
でもちゃんとリアルなんだよなー。
一つだけ気になったのは、アメリカ原住民(ネイティブ・アメリカン)を「インディアン」と訳出しているところ。
原文がそうなのかなー。そうならしょうがないけど……。
本当は「インディアン」という表記は使うべきじゃないんだと思うのだが。
……ま、そのくらい、読む側がわかってりゃいいか(妥協)。
そういえば、このミステリでは、かなり最初のうちから「こいつが犯人に違いない」と目星をつけていたら、実際にそいつが犯人だった。
動機はわからなかったんだけど(笑)。
ちょっと自慢?(自慢するほどのことではないが)
実はシリーズモノの4作目だというのは、あとがきを読んで初めて知った。
前の3作は、気にならないといえば嘘になるが、同時に「なくてもいいや」とも思う。
私には、前作がどんな話だったかを、全く想像できないのだ。
寧ろ「前作なんかなければいいのに」などと不謹慎なことを思ってしまう(笑)。
これはつまり、このハナシが、それだけ「独立」しているからなんだろう。
シリーズであることを意識させる箇所はほとんどない。その点でも上手いんだと思う。
ただ、長いよね(笑)。
そして、やっぱり「大団円」とは行かない(ハードボイルドですから)。
テイストは独特だし、好みの分かれそうなミステリではある。
まぁ、「ちょっと長めでシリアスなミステリをたまには読みたいな」という方にはオススメ。
「笑い」はほとんどナイので(ハードボイルドですから)、「ユーモアがほしい」「軽いのをいくつもこなしたい」というヒトにはオススメしない。
通勤時なら、一週間くらいもちそう。
ハナシにのめりこんで、乗り過ごさないように注意(笑)。
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