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2003年5月13日 (火)

舞台:「オイル」★シアターコクーン

■演目:オイル
■脚本・演出・出演:野田秀樹
■出演:松たか子、藤原竜也、小林聡美、他
■日時:2003年5月13日(火)19:00~
■会場:シアターコクーン(渋谷)

久しぶりの野田。

最初の90分はいつもの言葉遊び(「オイル」と何と引っ掛けているかはご自分で確めてくださいね)、問題提起があちこちに目立たぬようちりばめられてはいるが、どちらかといえば見た目に軽いブラフ。
見ていて「そこそこ面白いけど、その程度だな、野田も老いたか」などと実に実に失礼な感想を持ってしまったが、それは違う。
最後の20分が本番である。
(でも実は、前の部分があるから後が活きるのではあろう)

ドン、と、原爆を落とされたような衝撃。
知らなかった。
あなたがそんなに怒っていたなんて、知らなかったよ。
ごめんなさい。あなたはアーティストで、そういう社会的なことにはあまり目を向けないのかと思っていた。
こんなに怒っていたなんて、今日まで考えてもみなかった。

怒りはイラク戦争に対するもの。
いや、そうではなくて、この世のすべてに対するもの。
何度も同じ過ちを繰り返そうとする米国への、
そして被爆国でありながらその痛みを忘れて米国のお先棒を平気で担ぐ日本への、
「さあ、どうだか」と他人事のように静観を決め込みその場の勢いで自らの矜持を売り飛ばしまっとうな怒りは正しく表そうとしない大衆への。
怒り。
こんなに激しく怒っていたとは。
知らなかったよ、ごめんね。
なぜか謝罪の言葉ばかりが口をつく。
それは自分も負い目があるから。
私はちゃんと怒っていただろうか? 正しく怒りを表し切れていなかったのではないか、と。

主役級全員怪演。
舞台美術はノーマル。
音楽は……蜷川と同じく、野田はクラシックの力をよく知っている。
世界はオイルで燃やされる。

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