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2002年9月11日 (水)

読書:『風の果て』★藤沢周平

■著者:藤沢周平
■出版社名:文芸春秋(文春文庫)
■発行年月:1988年01月
■価格:上巻・476円/下巻・448円(税抜)

久しぶりに読んだ、このひとの小説。
上下巻もので、連作長編といったらいいか。
ことのはじまりは筆頭家老のもとに、かつての剣術仲間から果たし状が届くこと。
50歳にもなってまだ独身、しかも次男ゆえ禄がないいわゆる「厄介叔父」のその男は、家老のことを「正義無し」と書面の中で糾弾していた。
家老は、かつての青春の日々を思い出す……。

で、思い出しながら過去の話が、若い日々からその後現在に至るまで少しずつ語られていくという手法。
一話ごとに区切られ、でも全部読み集めるとそれらがまた一つの物語を成しているという、藤沢お得意の長編である。

主人公は……江戸版・島耕作とでもいえばいいだろうか。
島耕作をもっとかっこ悪く(もとい普通に)したような男。
武家社会が舞台ながら、仕事好きなサラリーマンとしか思えない。

彼のとる道はまっとうに見えるけれど、必ず一条の疑問を残す。
その疑問を投げかける役目を果たすのが、果たし状をつきつけてきた友人だったり、同僚だったり、義父だったりするのだが、主人公に対して「絶対にこいつが正しい」という絶対的な感情移入ができないところが逆にこの小説の持ち味になっている(感情移入はがんがんできます、念のため)。

生きて歳をとるということは、何かを後ろに振り捨てているということだ。
何かを得るということは、二度と戻らぬものを抱えるということだ。

胸躍るようなことはないが、それでも主人公の栄達のさまを楽しく読み進められ、
一方で、人生の希望に表裏一体でつきまとうそこはかとない悲哀を感じられる佳作(それも普通の人間の日常的な悲哀を)。

相変わらず彼の作品は読みやすく、読んで心地よく、面白かった。

▼上巻はこちら
風の果て〈上〉 (文春文庫)

▼下巻はこちら
風の果て〈下〉 (文春文庫)

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