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2002年5月 7日 (火)

NEC第11回古楽レクチャー「コラールとコラールカンタータ」

■講演:コラールとコラールカンタータ
■講師:鈴木雅明(バッハ・コレギウム・ジャパン)
■日時:2002年5月7日 19時開演
■会場:東京オペラシティ・リサイタルホール

コラールは、ルター以後に作られだしたドイツ語賛美歌。主にドイツ・プロテスタントによる。
それまで教会音楽はカンペキに教会、すなわち神の(使徒の)代理人たちに属するものであり、聖書と同様、民衆にはご縁のないプロフェッショナルなものだった。
ルターは聖書を翻訳して、そうした代理人たちの独占権を地に落とした功労者だが(カトリックの方、ごめんなさい)、聖書だけでなく教会音楽も独占権廃止の方向へ進めたようだ。
彼は、歌うことによって民衆もミサに能動的に参加し(ありがたいオコトバを聞いているだけではダメ)、神の言葉、神の訓えに与るべきだと思ったのだろう。
字も読めない、楽譜なんかお話にならない、そうした彼ら(特に子供たち)に歌を耳で覚えさせ、血の滲むような努力の末に、民衆が歌う「賛美歌」というジャンルが確立した。
ドイツでのこうした賛美歌を、コラールと言うらしい。

バッハはこのコラールをたくみに利用し、カンタータに組み込んだというのが鈴木氏の本日のオハナシ。
カンタータとは、もともと一人によって単線で歌われる歌のことらしい(全体にうろ覚えなので、あまり粗探ししないでくださいね‥‥)。
語源はイタリア語のカンターレからきている。
そのうちに、コラールのように合唱パートだけでなく、アリア(音楽的強調パート)、レチタティーヴォ(お喋りチックなパート)なども含む多重構造による歌を指して、カンタータというようになった。

カンタータはもともと世俗のものだった。
でもあるとき、どこかの牧師がカンタータ詩集を出して、それに『宗教的カンタータ。ただし教会のものではない』といったタイトルをつけた。
鈴木氏によればこれは「宗教的演歌。ただしお寺とは関係ない」と言っているようなもので、聞いた人が「なんだそりゃ?」と思うようなタイトルであるらしい。

その後(割愛しますが)、教会カンタータと言われる分野が確立していき、バッハはその発展と大成に貢献するわけだが、彼の作曲した中に「コラールカンタータ」と言われる一部門がある。
それらはちょうど1724年6月11日の三位一体節後第1日曜日から、1725年3月25日の受胎告知の祝日のミサまで、ほぼ1年間に亙って作られた。
カンタータは、コラールが前後に配され、その中間にアリアとレチタティーヴォがいくつかずつ導入される。
その、前後のコラールに、既にあったコラール(賛美歌)の歌詞をそのまま利用したものをコラールカンタータというらしい。アリアとレチタティーヴォに使われる歌詞は、コラールの詞を織り込みながらも自由詩の形式を取っている。
中間の自由詩を毎週作ってくれた協力者、詩人が側にいたのではないかという話だ。

詩人はさておき、コラールをアリアやレチタティーヴォに反映させるというバッハの試みは、何も詞に限ったことではなかった、というのが今日のレクチャーのテーマ。
それぞれのアリア、レチタティーヴォには、コラールの主旋律を展開した旋律が散りばめられており、聴衆が繰り返しコラールを思い出し、信仰の原点を求めるよう、構成されているという。
それは、もともとがマイナーであるのがメジャーに変えられていたり、コードが変わっていたり、高音だけが微妙にずらされていたりとさまざまなので、シロートの私なんかには聴いただけではわからないような工夫である。

とにかく、音楽的な意味でも、コラールはアリアやレチタティーヴォのパートにも浸透し反映させられているのであって、そういう点でもコラールカンタータたちはただのカンタータたちと一線を画すといってよい、といった話だった。

そうやってコラールの多層的な展開を試みていった連なりで、コラールファンタジーともいわれる(?)ヨハネ受難曲が1725年3月30日に作曲されることになったのではないか、とは、質疑応答の時間に仕入れた話である。

途中、コラールやアリア、レチタティーヴォをバッハ・コレギウム・ジャパンの面々(S/A/T/B各1名)が歌ってくれて、聴いていてとてもいい気分だった。
それだけに後ろでカメラが「ぴぴっ」だの「ばしゃり」だのと五月蝿く音を立てるのが、耳障りでならなかった。それだけが残念だった。

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