映画:「ベン・ハー」
■監督:ウィリアム=ワイラー
■原作:ルー=ウォーレス
■出演:チャールトン=ヘストン、スティーヴン=ボイド、ジャック=ホーキンス、ハイヤ=ハラリート
ル・テアトル銀座(旧セゾン劇場)で映画「ベン・ハー」を観た。
巨匠ウィリアム=ワイラー監督が6年半の製作期間と1959年当時での1500万ドルと言う巨費を投じて完成させた、スペクタクル史劇超大作。スペクタクルとはこの映画のためにあるような言葉だ。
だからってアクションのみとは思わないでほしい。
この映画においてベン・ハーは確かに主人公だが、もう一方で、実はイエス=キリストが隠れた主人公なのである。その証拠に、タイトルロールで「The Story of Life of Christ」と出るし、導入はイエス生誕からなのだ。
あらすじはこんな。
時はローマ帝国時代。帝国占領下にあるエルサレム地区の名家に生まれたジュダ=ベン・ハーは、親友メッサラに裏切られ、反逆罪で奴隷となってしまう。運命に翻弄されながら生き抜いた彼は、母と妹を救うために、そしてメッサラに復讐するためにエルサレムへ戻る。そこで戦車競技大会に出場し、メッサラと宿命の対決を迎えることに‥‥。
この戦車競技大会がクライマックスの一つで、すごい。もう言葉では言い表せない迫力。
だって本物なんだもん。本当にチャリオットを走らせるか!?
まず競技場は東京ドーム2倍強の大きさで、1年半がかりで建設された。
競技に出る戦車は9台。1台につき馬4頭だから、馬36頭!!
そのうちの4頭は真っ白な白馬(もちろんベン・ハーの)、さらに4頭は真っ黒な馬(こちらはメッサラ)で、それぞれ見事に美しい。
スタートからゴールインまで192ショット8分41秒、その撮影だけで3ヵ月半かけたそうだ。
とにかく素晴らしい。ものすごいスピード感。最近のカーチェイス場面なんかメじゃない。
まぁ、落ちて踏みつけられる人間が人形に摩り替わってるなとわかったりするけれども、何しろ走ってる馬は本物、「偽ものだ」という意識が全然湧かないんである。
リアリティを出すものは何なのだろう?
本物を使う、本物そっくりに真似る、ということだけでは出てこないようだ。
ベン・ハーの戦車競技で感じられるのは同時性(あるいは臨場感?)だ。
今、まさにそこでジュダとメッサラがしのぎを削っている、自分はその観客として同時に在るという幸せな錯覚。
「で、どこにキリストが出てくるの?」って?
それは見てのお楽しみである。
ちょっと印象に残ったのが、ジュダが(この名前も意味深だなぁ、ユダだもん)母と妹が業病に冒されていることを知って、ローマへの憎しみを抱きながら、バルタザール(東方の三賢者の一人)に川岸で出会い、言葉を交わす場面だ。
ジュダはかつて奴隷として連行されるときに、ある場所である人から水を恵んでもらったことがあった。
そのときのことを引用して、「水をもらわなければよかった。こんな自分が生きていても仕方ない」というようなことをバルタザールに告げる。
このとき、英語で彼は確か「I’m still thirsty.」と言っていた。この「thirsty」は、「喉がかわいていたときに水をもらった」ことと、人生における渇き・餓えとの両方にかかっているのだと思うが‥‥
実は、キリストが十字架にかけられたとき、誰の福音書だか忘れてしまったが(ヨハネの福音書か?)、最後に「私はかわく」とおっしゃったとの記述が残っている。
「私はかわく」つまり「I’m thirsty」である(英訳版新約聖書に拠れば「I thirst.」)。
キリストはジュダや他の人々の「かわき」を引き取って亡くなったということなのか。
これ以上しゃべると、ネタバレになってしまう。
劇場での上映は23日までしかないが、興味のある方はぜひどうぞ。
でも観ようとしたら4時間かかるから、覚悟してね。
紹介ホームページはこちら
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ベン・ハー 特別版(2枚組) [DVD]
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