読書:『フェードル アンドロマック』
■著者/訳者名:ラシーヌ/作 渡辺守章/訳
■出版社名:岩波書店(岩波文庫)
■発行年月:1993年02月
フランスの戯曲家ラシーヌの作品2編を載せた文庫。2編ともエウリピデスのギリシャ悲劇を原典としています。
●『アンドロマック』
アンドロマックはアンドロマケーのフランス語読み。トロイの英雄ヘクトールの妻で、戦争に負けた後は、ギリシア方の英雄アキレウスの息子ピュラス(でしたっけ?)の戦利品となる。
ピュラスはアンドロマケーにぞっこん(死語)なんだけど、アンドロマケーはヘクトールに操を立てたくて、一方ピュラスの婚約者(名前忘れた)はピュラスに振り向いて欲しい。その婚約者に横恋慕しているのがかの有名な若きオイディプスである。
人間関係がめぐりめぐって、英雄の息子を待つ破滅の運命とは……。
もー、人間のやることって昔っから変わらないよね。私自身にはご縁がありませんが(笑)。
誰も彼も愚かしくて愛しい。でもオイディプスはイヤだな。これを読むとキライになるかも。
●『フェードル』
ギリシア語ではパイドラー。要は、英雄王テセウスの息子ヒッポリュトスに、後妻のパイドラーが邪恋を抱くという話だ。
これもギリシア悲劇が母体で、もともとはヒッポリュトスがアルテミスを尊崇し、アフロディテをないがしろにしたことが原因で、アフロディテの呪いでパイドラーが横恋慕し、ヒッポリュトスを破滅に追いやるという筋立て。主人公はヒッポリュトスで、パイドラーは単なる脇役だった。これをラシーヌが視点を変えて主役に引っ張り上げ、それが見事に成功している。
パイドラーの狂おしい恋心が、その相手を破滅に追いやるさま、そして一度は救おうとしながら、嫉妬の炎で破滅を選んでしまう愚かさ(他人を救えば自分も救われるのに)がしっかりと表現されています。
ギリシアの神様って、本当になんて我儘。もっともこの『フェードル』では、神様は表立っては登場しません。が、ラシーヌ研究者にとっては彼の戯曲に現れる「異教の神」は重要な研究テーマらしいです。余談ですが。
どちらも呪わしいハナシながら、美しいです。…美しくなってしまっています。
洗練されたものとされていないものと、どちらが悲劇としてよりふさわしいかは、私にはわかりません…。
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